WHO、人工甘味料を推奨せず

2023.09.01

人工甘味料の一つ「アスパルテーム」は、発がん性がある可能性がある。非糖質甘味料は体脂肪減少に長期的な利益をもたらさないため、推奨できない――。
 
どちらも、WHOが現段階で下した評価結果です。糖質オフがブームになって以来、人工甘味料を含めた非糖質甘味料を使った糖質オフ商品は増えています。「甘くておいしいのに糖質は少ない!」と、糖質を気にしている方にとってはよき味方だったかもしれませんが、やっぱり「ほどほどに」が大切のようです。

人工甘味料と発がん性

まず、WHOがアスパルテームの健康への影響の評価を発表したのが、2023年7月です。国際がん研究機関(IARC)と世界保健機関(WHO)、食糧農業機関(FAO)の食品添加物に関する合同専門家委員会が発表しました。

IARCは発がん性の根拠の強さに応じて下記の4つのグループに分類しています。
「グループ1」は、人間に対して発がん性の十分な根拠があるもの。
「グループ2A」は、おそらく人間に対して発がん性があるもの。
「グループ2B」は、人間に対して発がん性がある可能性があるもの。
「グループ3」は、人間に対する発がん性について分類できない、つまり人間にも実験動物にも発がん性の根拠が認められないもの。
 
アスパルテームは、下から2番目の「グループ2B=発がん性がある可能性がある」と分類されました。

どのぐらいまでなら安全?

ちなみに、アスパルテームとは人工甘味料の一つです。ダイエット飲料やチューインガム、アイスクリーム、ヨーグルト、シリアルなど幅広い食品、飲料製品に、甘味料として使われています。糖質オフを謳った商品の原材料を見ると、かなりの確率でアスパルテームが使われています。
 
糖質オフ商品を選ぶのは健康を気にするから、ですよね。
発がん性の可能性があるということは、アスパルテームなどの甘味料を使った商品は避けたほうがいいのでしょうか?
先の合同専門家委員会は、許容可能な1日の摂取量を「体重1kg当たり40mg」としています。この制限内であれば安全ということです。
1日の許容摂取量を超えるには、体重70kgの人の場合、アスパルテームを200または300mg含む清涼飲料水9~14本以上摂取する必要があるので、一般的な摂取量であれば、許容量を超えることはなさそうです。

甘味料への置き換えにダイエット効果なし?

ここまでをおさらいすると、人工甘味料の代表であるアスパルテームには発がん性がある可能性がある、ただし、問題になるのはかなりの量を摂った場合なので普通に摂取する分には心配する必要はない、ということでした。
であれば、安心して、人工甘味料を使った糖質オフ商品を選んでいいのかな……と思いきや、WHOは2023年5月に発表した非糖質甘味料に関するガイドラインで、体重管理や非感染性疾患のリスク軽減を目的とした非糖質甘味料の使用は推奨しない、と指摘しているのです。

非糖質甘味料とは、アスパルテームなどの人工甘味料と、ステビアなどの天然甘味料のこと。ブドウ糖が含まれていないので血糖値を上げず、カロリーもゼロもしくは少ないのが特徴です。
ところが、WHOのガイドラインでは、遊離糖類(ブドウ糖などの単糖類と、ショ糖などの二糖類のこと)を非糖質甘味料に置き換えても長期的には体重管理には役立たず、むしろ、非糖質甘味料を長期的に摂取することで2型糖尿病や心血管疾患、成人の死亡率のリスク増加などの可能性があることが示唆されました。

つまり、カロリーもなく血糖値も上げない甘味料だからと安心して頼り切っているとよくない、ということです。WHOは、結局は甘み自体を控えることが健康に役立つと指摘しています。
というわけで、甘いものはほどほどに、たまのご褒美として楽しむほうがいい、ということですね。

◎参考
WHO「Aspartame hazard and risk assessment results released」
WHO「WHO advises not to use non-sugar sweeteners for weight control in newly released guideline」

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