心疾患の突然死を防ぐ大事な習慣

2021.03.01

日本人の死因で、がんに続いて二番目に多いのが「心疾患」です。なかでも多いのが、急性心筋梗塞をはじめとした虚血性心疾患。動脈硬化が進んだ結果、心臓に血液を送る大動脈が狭くなったり詰まったりして、十分に血液が流れなくなる状態です。
心筋梗塞をはじめとした心疾患の予防に運動が有益であることはよく知られています。それだけではなく、運動習慣は、心筋梗塞が起こったあとの死亡リスクを低下する可能性もあるようです。

1週間のエネルギー消費量が予後を左右する

これは、デンマークのビスペビャー・フレデリクスベー大学病院のキム・ワッド・ハンセン氏らが行った研究です。
欧州の10のコホート(観察対象となる集団のこと。ここでは149万5,254人)から、フォローアップ中に急性心筋梗塞を起こした2万8,140人が、対象とされました。
1週間の総エネルギー消費量(身体活動レベル)によって、①座りがち(7MET・時未満)、②低い(7~16MET・時)、③中程度(16.1~32MET・時)、④高い(32MET・時超)――という4つのグループに分けて、心筋梗塞の急性期における死亡リスクとの関連を調べたところ、座りがちな人に比べて、1週間の総エネルギー消費量が多い人ほど、つまりは身体活動レベルが高いグループのほうが、急性期の死亡リスクが低いことがわかったのです。

座りがちな人ほど瞬間死が多い

分析対象となった2万8,140人のうち、17.7%にあたる4,976人が発症から28日以内に亡くなっていました。さらに、そのうちの3,101人(62.3%)は、発症後1時間以内の瞬間死でした。
これを先ほどの1週間の総エネルギー消費量別に見ると、次のように、中程度から高レベルの身体活動が瞬間死と28日以内の死亡リスクを下げることが示唆されました。

●座りがちな人に比べて身体活動レベルの高い人は、急性心筋梗塞後の瞬間死のリスクが45%低く、28日以内の死亡リスクも28%低い
●座りがちな人に比べて身体活動レベルが中程度の人は、急性心筋梗塞後の瞬間死のリスクが33%低く、28日以内のリスクも36%低い

毎日の入浴も心疾患の予防に

この研究からわかるのは、日頃の運動習慣が、急性心筋梗塞などの心疾患の予防につながるだけではなく、発症後の死亡リスクも下げてくれる、ということです。突然死は予防も予測もできないものと思われがちですが、座りっぱなしの生活ではなく、身体活動を増やすことが突然死のリスクを減らします。
そのほか、国内の研究では、毎日の入浴習慣(湯船につかっての入浴)が虚血性心疾患や脳卒中の発症リスクを減らすという結果も出ています。この研究では、「ほぼ毎日」浴槽入浴をしている人は、「週2回以下」のグループに比べて、虚血性心疾患の発症リスクが35%低く、脳出血で46%、脳梗塞で23%の低下が見られたそうです。

なるべく身体を動かす習慣をもつこと、毎日お風呂に入ること。そうした毎日の習慣が、動脈硬化の予防につながり、怖い突然死を遠ざけてくれます。

◎参照
Association of fatal myocardial infarction with past level of physical activity: a pooled analysis of cohort studies
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33564885/

浴槽入浴頻度と虚血性心疾患・脳卒中発症リスクとの関連
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8486.html/

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