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腰痛の8割は原因不明って本当?

2020.07.01

腰痛もちの人はとても多いですが、「腰痛の8割以上は原因不明」という話、聞いたことはありませんか?
腰痛の原因を調べるためにレントゲンやMRIなどの画像検査を行っても、8割以上のケースでは原因を特定することはできない――。
そんな話を耳にしたことのある人は少なくないと思います。そう広まったきっかけは、日本整形外科学会と日本腰痛学会の監修で2012年に発行された『腰痛診療ガイドライン』でした。
画像検査などを行って原因が特定できる腰痛を「特異的腰痛」、原因を特定することのできない腰痛を「非特異的腰痛」と言います。

『腰痛診療ガイドライン2012』では、
「下肢症状を伴わない腰痛の場合、その85%では病理解剖学的な診断を正確に行うことは困難である」
と、書かれたのです。
つまり、足の痛みやしびれといった下肢症状を伴わない腰痛の85%が、原因を特定することのできない非特異的腰痛だ、とガイドラインに記載されたわけです。

75%以上で診断が可能?

この「非特異的腰痛が85%を占める」という言葉が独り歩きしてしまい、ほとんどの腰痛は原因不明なんだ、という印象が広まってしまったのですが、果たして本当に85%の腰痛が原因不明なのでしょうか?
じつは、2019年5月に発行された『腰痛診療ガイドライン』の改訂第2版では、「75%以上で診断が可能」と書かれています。
腰痛の8割以上が原因不明と言われていたのが、3割未満にぐっと減ったのです。
どういうことでしょうか?

整形外科医のていねいな診察で診断が可能に

初版の『腰痛診療ガイドライン2012』に非特異的腰痛が85%と書かれた根拠は、欧米の学術誌に発表された論文でした。ただ、その論文は、米国の総合診療医の情報をもとにしたものであり、腰痛治療に精通した整形外科専門医が診察した結果ではありませんでした。
そこで、専門医が丁寧な検査と診察を行えばもっと多くのケースで正確な診断が可能ではないか――との考えから、腰痛治療の専門家である整形外科医院における腰痛症診断の実際について国内で行われた調査が、「山口県腰痛study(スタディ)」です。

これは、2015年4~5月に山口県内の整形外科医院を初診で訪れた323人の腰痛患者さんを対象にしたもの。
まず、従来から「特異的腰痛」と言われてきた、腰椎圧迫骨折や腫瘍による腰痛、下肢症状を伴う腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱狭窄症、感染、強直性脊椎炎、内科・泌尿科・婦人科疾患による腰痛など、原因が明らかなものとして分類されたのは21%でした。この割合は、これまでに言われてきたこととほぼ同じです。
ただし、残りの「非特異的腰痛」と分類された患者さんについて、整形外科医がていねいな問診と診察を行ったところ、最初に「非特異的腰痛」と分類された患者さんの72%で原因部位を特定することができたのです。
つまり、最終的には全腰痛患者さんの78%が診断可能であり、「原因不明」とされたのは22%でした。

腰痛に重大な病気が隠れていることも

この「山口県腰痛スタディ」の結果をもとに、改訂版の『腰痛診療ガイドライン』では、「『腰痛の85%が非特異的腰痛である』という根拠は再考する必要がある」と書かれるに至ったのです。

腰痛をもっている方のなかには、「どうせ検査をしても原因はわからないから」と思っている方もいるかもしれません。でも、「8割が原因不明」というのはオーバーな表現であることがわかっていただけたでしょうか。
そして何より、腰痛のなかには、がんや圧迫骨折、腹部大動脈瘤や婦人科系、泌尿器科系の病気など、重大な病気が隠れていることもあります。そうした病気ではないことを確認するためにも、一度、医療機関で検査を受けることが大事です。

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